なぜ私たちは「すまみつ」を出そうと思ったのか?

こんにちは、「スマホで光恵ちゃん」(略称:すまみつ)発行人の小形です。知らない方もいるでしょうからお断りすると、青木光恵の夫でもあります。このブログでは青木光恵の活動や近況についてお知らせしていこうと思います。

 

さて、この数週間「すまみつ」の準備でてんてこ舞いがつづいています。それでも、ついさっき創刊号のデータを渡したので一段落(青木は2号目のネームができなくて浮かない顔してますが)。そこで11月5日の発売開始まで、このブログを使って読者の皆さんにお知らせしたいことを書いていこうと思います。まず、なんといっても最初に書かなくてはいけないことは、「なぜ私たちはこの雑誌を出そうと思ったか」ということでしょう。

 

これは青木自身も時々Twitter等で呟いていることですけど、ここ数年、仕事の依頼がどんどん少なくなってきています。もちろんフリーランサーの宿命として、彼女の描くマンガがつまらなくなったいうことなら、それも仕方ありません。でも、自分にはどうしてもそうは思えないんですね。青木光恵のマンガは相変わらず面白い。なのに仕事は減っている。一体なぜでしょう?

 

たとえば、竹熊健太郎さんのこの記事などは回答になるでしょう。つまり、この10年ほどの出版不況により、マンガ出版社が長年維持してきた「マンガ雑誌は赤字でも、そこでの連載をまとめた単行本で利益を上げる」というビジネスモデルが崩壊してしまった。その結果、マンガ雑誌は単行本が売れるであろう作家だけに原稿依頼をするようになった。だから単行本の販売実績のない青木のような作家には依頼が来なくなった……。

 

こういうことを書くと「単行本が売れないのはマンガが面白くないからだろう」と言われそうです。でもそれは違います。たしかに単行本の実売数は面白さのバロメーターの1つでしょうが、それが全てではありません。単行本の売れ行きにつながらない面白さがあっていいのだし、それこそがマンガという表現の豊かさなのだと思います。

 

もう一つ。仕事がなくなってきているマンガ家は青木だけではありません。彼女と同じくらいのキャリアをもつ中堅作家の多くが同じ状況にあります。マンガ家同士があつまると、決まって「最近仕事がなくなった」「景気が悪い」というような会話が交わされます。つまり、これは青木の個人的な状況というより、マクロな状況の一断面と言えそうです。

 

ちょっと穿った見方をすれば、雑誌が苦しくなり編集費も少なくなったので、依頼は確実に売れ行きが見込める作家と、原稿料が安くてすむ新人に集中し、中途半端に原稿料の高い中堅作家にはあまり依頼がいかない……それがマンガ界の現状と言えないでしょうか。

 

だからといって、愚痴を言っていても仕方ありません。私たちは生きていかねばならない。そこでここまでの話のポイントをまとめると、次のようになります。

 

マンガ不況の原因は出版社の戦略ミスにあり、マンガ家に責任はない。

 

つまり、問題があるとすれば出版社=流通/販売であり、マンガ作品そのものではない。だったら、流通/販売を変えればいい。今までと変わらない作品を、新しいパッケージ、新しい販路で売ればよいのではないか?

 

そこにやってきたのが2010年1月のiPad発売にはじまる「電子書籍元年」でした。ここで、自分達で電子書籍を作ってアマゾンなどの電子書店で売るということが、現実の選択肢として現れたわけです。よし、これだ!

 

とはいえ、すぐにそれが実現できるわけではなく、個人ではどうすることもできない壁が立ち塞がっていました。やがてマンガを電子化できるオープンなフォーマット(EPUB 3)が完成し、それを閲覧できるアプリが登場し、アマゾンが日本で電子書店を始め……と言った具合に、ようやく環境が整ってきたというのが、ちょうど1年前でした。

 

青木と電子出版について、具体的に話し始めたのは今年の初め頃だったと思います。たしか、青木のエッセイマンガの一部をスキャンして、それを各種サイトを参考にしながら自分でEPUBファイルを作り、青木に見せて説得したのでした。しかし、そこからなかなか前に進みませんでした。それが一気に現実化しはじめたのは、ゴールデンウィークの同人誌即売会「コミティア」で、ブクログの大西隆幸さんに声をかけていただいてからです。

 

大西さんは、私たちにはない電子出版に関する具体的な技術やノウハウ、そして電子出版に対する熱い思いを持っている方でした。彼との間で何回も試作や意見交換を繰り返しながら、すこしずつ「すまみつ」のあるべき姿がはっきりしてきました。

 

長くなってしまったので、続きは次回にしましょう。そうですね、「「スマホにフォーカスした」とはどういう意味か?」という話を書こうかな。言い換えると、これは「単行本が売れない」という判断を下されたマンガ家が、スマートフォンを使ってどうやって生き延びるかという話になります。では、また次回お目にかかりましょう。